「TSUNAGUトート」ができるまで vol.1

vol.1 道の駅の研修生とアートクラブのつながりをひもとーく

今年10月から販売を開始し、11月3日(金)〜5日(日)の3日間行われる「エス・ウェル・フェス」でも販売される、
TSUNAGUトート」がどのようにして生まれたのか、2回にわたってひもとく特集記事。
今回は、「TSUNAGUトート」の企画を立ち上げた、東部特別支援学校教諭の鈴木ゆうか先生(取材当時は道の駅にて研修期間中)と、藤枝のアートクラブ「waC」メンバーの吉田恵美子さんにお話をお伺いしました。

左:吉田恵美子さん 右:鈴木ゆうか先生
ご当地牛乳が好きという吉田さんと「丹那牛乳」で乾杯!和気あいあいとした雰囲気で、お話をお伺いしました。

「TSUNAGU トート」とは?

静岡県教育委員会の「民間企業研修」で研修生として赴任された特別支援学校教諭のアイデアから生まれた、地域福祉と道の駅が「つながる」当駅限定販売のトートバッグ。
特別支援学校卒業生を中心としたアートクラブ「waC」(藤枝市)と「atelier QUOKKA」(富士宮市)のメンバーが描いた当駅キャラクター「マモリくん」のイラストが施され、プリントは就労支援B型事業所「ブルービート」(伊豆の国市)が担当。

2023年10月から、道の駅物産販売所にて販売を開始。
11月3日(金)〜5日(日)実施の福祉イベント「エス・ウェル・フェス」でも、特別ブースでの販売を予定しています。

吉田さんは特別支援学校を中心に35年間教諭を務め、焼津にてスープ屋「Hygge」を開業。
地域のひとの集まる場づくりをしながら、アートクラブ「waC」の立ち上げメンバーとして、活動に参加しています。
ゆうか先生とは藤枝の特別支援学校に赴任した際の指導教員というご縁。現在でもお店に訪れたりなど親交があるそうです。

画集をお持ちいただきながら、説明してくださいました
どちらも題材は「お花」!個性による違いがおもしろい

2012年、当時藤枝の特別支援学校教諭であった松本 進先生を中心に「waC」がスタート。
その後、松本先生の異動によって、富士宮にもアートクラブ「atelier QUOKKA」が生まれました。
藤枝に赴任したことがきっかけでwaCにかかわる機会もあり、atelier QUOKKAの存在も知っていたというゆうか先生。

吉田さん

waCは、絵を描く人である「メンバー」が現在27人います。
私たちのようなサポーターは「スタッフ」と呼んでいますが、美術を見ている人が6人ほど、それ以外を担うスタッフや保護者さん、ファンの方が集まって活動しています。
当初は特別支援学校の高等部の美術部にいる子が中心でした。
学校を卒業してしまうと、ひとりで絵を描く活動を続けることは難しい。授業で見ていた子たちもずっと印象に残っていて、彼らの才能が「もったいないな」とは感じていました。

ゆうか先生

今回、研修生として道の駅で勤務していく中で、「マモリくん」という愛されるキャラクターが道の駅にいると知りました。
アートクラブの子どもたちがマモリくんを描いたら、どんなものになるかなと思いついて、まず、waCとatelier QUOKKAを主宰している松本先生に、子どもたちにマモリくんの絵を描いていただく提案をしたのがきっかけです。
道の駅のグッズとして持ち歩いていただくことで、集客のきっかけになれたらといいなと思い、イラストを入れたトートバッグを提案しました。道の駅にも恩返ししたいという気持ちがまず軸にありましたね。

「エス・ウェル・フェス」までは物産販売所で販売しています
吉田さんにも実際の売り場を見ていただきました

そんなアーティストたちが描いてくれた「TSUNAGUトート」のできばえはいかがですか?

吉田さん

かわいいと思います!
プリントするバッグの質や値段設定にも妥協をしなかったところも、とってもいいなと思います。
福祉関係の商品だと「もっとこだわって良い形や値段にできるのに…」と思うときがあったりするんです。
たくさんの人に買っていただけたら嬉しいなと思います。

ゆうか先生

自分が持っていて使いやすいバッグがこの型だったんです(笑)
他のバッグも考えたんですけど、やっぱりこれがいいなぁと。
他にも「牛乳パックが入る大きさ」とか、自分なりにこだわりがあったので、予算を考えるのに悩んで悩んで。大変でしたね。

実際の原画は大きなサイズで、並ぶと見応えがあります
「これは誰?」と聞きながらひとつひとつ丁寧に見てくださいました

以前北欧を旅した際、障がい者の手がける商品がブティックのようにセレクトされているお店を見た吉田さん。
百貨店に並んだ商品には、きちんとラッピングがされ、美しく見せることを意識した売り場づくりがされており、
日本ではなかなかないその様子に感動したとのこと。

海外の福祉の状況や絵のお話をたくさん伺いつつ、普段アーティストたちとかかわる中での思いを聞きました。

吉田さん

この活動を続けていて驚いているのは、それぞれの画力が上がっていること。もともとの才能だけではなくて、描き続けていくことで絵にも力がついている。それはとてもすごいことだと思うんです。
見ているほうも眼力が養われます。

「まちじゅうアート」という取り組みで、銀行に絵を飾っていただく機会があったのですが、絵の近くにアーティストのキャプションとあわせて、その絵を選んだ方の感想が飾られていたんです。
選んだ方はもちろん銀行に勤めている方。それがすごく素敵だと思いました。

プロの目でなくても、絵を見て「いいな」と感じること。
それだけでいいなと思うんです。
いろいろな人に、彼らの絵が届くといいなと思いますね。

今年の「エス・ウェル・フェス」のウインドウアートは、waCの田中 拓実さんが原案を手がけてくれています。
函南ではなじみの深いモチーフが、マモリくんとともに道の駅の窓に描かれる予定です。

吉田さん

田中くんは家でもよく絵を描いていて、次の日の予定に影響してしまうぐらい夜遅くまで没頭して描いてしまうというほど、絵を描くことについて、情熱を持っている人です。

自分の世界がしっかりあって、誰かと同じモチーフを描いていても、色や形の自由さが出てくるし、筆に迷いがない。
切り取り方も特徴的だし、どういう風にものがおさまるのか、いろいろな違いがあるんですよ。

お仕事として彼らに絵を描いて欲しいという依頼もいただいたりすることもあるそうですが、
納期や条件が負担になりそうなものは無理に受けず、子供たちの個性を崩さずにできるよう進めているとのこと。

「エス・ウェル・フェス」では、アートクラブのメンバーが描いたマモリくんの絵が、ずらりと展示される予定です。
11月3日(金)には、ゆうか先生も一緒に「TSUNAGUトート」販売をしてくださいます。
ぜひ道の駅に足を運んで、バッグを手に取っていただき、彼らのイラストもご覧になってください!